2020年より日本腹部放射線学会の理事長に就任致しました。伝統ある本学会の理事長を拝命し、大変光栄に思います。
腹部放射線学会は、1992年に打田日出夫先生が創設されて以来、松井修先生、森宣先生、南学先生と錚々たる先生方が理事長を務められてきております。その歴史の中で、病理の先生がコメンテーターとして参加される画像病理対比の症例報告という国際的にも類を見ないスタイルを貫いてきています。1症例1症例を大切にするというスタンスが、大きな研究に繋がると考えており、症例報告は日常診療に直結する臨床研究の第一歩です。優れた演題は臨床放射線やAbdominal Radiologyに掲載されるというのもこの学会の質の高さを象徴していると思います。
伝統あるこの学会は近年主に3つの新たな試みを取り入れさせて頂いております。
1つ目は、従来より単一施設からの症例報告のみの演題でしたが、大会毎に珍しい疾患を指定し、その症例を多施設にご発表頂き、その疾患の画像所見の特徴を明らかにしていく“大会長公募症例”という枠組みが導入されています。大会後にこの多施設症例を集約してAbdominal Radiologyに原著論文として投稿することになっており、世界に先駆けて希少疾患の画像所見を発信していくことを目指しています。2019年から採用されております。もう1つは、複数症例であるテーマに絞って初期検討を行うPreliminary Researchという枠組みです。具体的には、病理対比の根拠に基づいた新たな撮影法の検討などtechnical noteに該当するようなものや、まだoriginal articleとして投稿していくには不十分な段階で、会場での質疑応答を通して皆でblush upしていくような演題を想定しております。2023年の大会から採用になっております。3つ目は、これまで画像病理対比を主軸においてきましたが、ゲノム解析に基づく診断名がつく時代になってきたことを鑑みて、画像ゲノム対比の研究も対象としていくことにしました。2024年の大会から適応したいと思います。
このように、従来の画像病理対比の症例報告を超えた枠組みを導入することで、腹部画像診断の研究の進歩に更に貢献していくことができると確信しています。
また、海外の学会との連携を更に密にしていくことにも力を入れていきたいと思っています。アジア腹部放射線学会の本会並びに教育セミナーに演者を派遣し、またSAR、ESGAR、ESUR、ASARにも講演者の推薦をしており、講演の希望者を募っております。また、賞も多く用意されており、大会毎の最優秀演題に対して与えられる打田賞、腹部画像診断に顕著な業績を有する若手に与えられる板井奨励賞、そして海外発表や留学を支援するバイエル奨励賞など多くの賞などがあります。いずれも、皆様からの多数の応募をお待ちしております。
微力ではございますが、当学会ならびに腹部画像診断の発展のために尽力させていただきますので、皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
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